高校2年女子生徒について、養護教諭からの相談。友人関係でトラブルがあったらしく、登校しても教室に入れず、保健室にいることが続いている。保健室では元気にお喋りしているので、「このままでは欠時オーバーになってしまうから、頑張って授業に出るように。」と励ますと、トイレの個室に入ってリストカットしてしまった。本人は「これまでにも時々リストカットはしていた。でも、保護者には連絡しないで。」と言うが、どう対応したらよいか。
これまでに本人の話を時間をかけて聴いていることと思いますが、本人が教室に馴染めない背景 (本人の性格特徴、学業成績、家庭環境、クラスの雰囲気など)や、教室に入れなくなった直接のきっかけについては整理されているでしょうか。まずは学級担任や他の教員とも情報交換して、共通理解の上、本人への対応の仕方を一致させたり、環境調整をしたりしましょう。校内で役割分担を決めておくことも大切です。
このようなケースの場合、誰かが本人の気持ちをきちんと聴いてあげることで、心の整理がつき、エネルギーが溜まり、それだけで教室に戻れることもあります。1回では無理でも、定期的に話を聴き励ましていくこと、本人ができることを見つけて自信をつけてもらうことで、動き出せることもあります。
それでもリストカット等の自傷行為が続くならば、本人を説得して、保護者に連絡し協力を求めることが必要になるでしょう。
高校1年女子生徒について、担任からの相談。大変真面目な生徒。実技はよくできるが、丁寧にノートを録っているにもかかわらずペーパーテストでは極端に点数が取れず、このままでは進級が危ぶまれる。中学2年の時、可愛がってくれていた祖母が亡くなってから、時々急に涙ぐむこともあり、気持ちの整理がついていないせいかもしれないとも思う。担任としては、何とか応援して進級させたいが、どうかかわってあげたらよいのか。
教科による好き嫌いや成績の良し悪しはあるのでしょうか。丁寧にノートは録っているものの、内容が理解できていなかったり、あるいは覚えることが極端に苦手な子供もいます。黒板とノートの間を目を行き来させながら文字を書くのに、人一倍の注意力や時間を必要とする子供もいます。何が原因でつまずいているのか、苦手な部分をどういう方法で補えばよいか。それを考えるためには、心理テスト等を使い客観的理解をすることと、本人との面接で具体的な工夫の仕方について話し合うことが有効です。
また、ご指摘のとおり、祖母の喪の整理ができておらず、うつ傾向になっていて気力が湧かなかったり、ぼんやりしていて授業を聞き逃したりしていることもあるかもしれません。
本人が教育相談センターの来所相談につながってくれれば、心理テストもできますし、心の整理も含めて、一緒に考えていけると思います。本人と保護者にセンターへの来所相談を勧めてみてください。
中学1年男子について、担任からの相談。自分の関心のある授業では、大きな声で言いたいことを言い、授業をかき回す。一方、やりたくない教科は教室にも行かず、反抗的。思い通りにならないと、周りの子供達に八つ当たりして乱暴する。保護者に注意してもらうように連絡をしたら、強く叱られたようで余計に不安定になったため、保護者に連絡することもためらわれる。スクールカウンセラーは、ADHDではないかと言っているが、どう指導したらよいのか。
科目による好き嫌いが極端だったり、授業をかき回したり、衝動的に周りの子供達に手が出たりするのは、もしかすると発達障害傾向があるのかもしれません。しかし、同じような傾向は、家庭であまり手を掛けて育てられていなかったり、家庭の中に暴力的な文化があったりすることで現れることもあります。
まずは、こんな本人にも、きっとよいところがあるはずなので、それを見つけては本人を認め、ゆっくり話をする機会を作るようにしてあげてください。発達障害の有る無しにかかわらず、子供と信頼関係を作ることが全てのスタートです。よいところを誉め、うまく行かないところは今後どうしていけばよいか、子供本人と一緒に具体的に考えていくことができるとよいでしょう。そして、保護者にも、まずは子供が頑張っていることを伝えて信頼関係を作り、困っていることについて一緒に考えてもらえるようにできればいいですね。他機関紹介は、その次の段階になると思います。
小学2年生女子児童について、学年主任からの相談。入学当初から母親と一緒でないと登校できず、母親と離れることをひどく嫌がり、泣きじゃくりパニックを起こす場面が多く見られた。友達の輪に自分から入っていくことが苦手なようで、教室では一人でいることが多かった。2年生になって、少しずつではあるが一人で登校できるようになり、担任や面倒見のよい数人の友達とは一緒にいられるようになったが、学校ではいつも不安そうな表情を浮かべ、何をするにも自信がなくおどおどしている。
なかなか母親と離れられず、いつまでも学校や学級に慣れないままでは、この先がどうなっていくのか心配である。このような子供にはどのように対応すればよいのか。
母親から離れることや学校で一人で行動することに不安を感じているようです。このような児童には、無理やり母親と離そうとするのではなく、例えば母親には積極的に学校行事に参加してもらうようにすることで、児童の不安を軽減するようにします。そして、学級担任は、班分けや係決めを工夫して友達がつくりやすいような配慮をします。このように、まずは教室や学校が本人にとって安心できる場と感じられるよう働きかけていくことが大切です。さらに、学校の様々な活動の中で、本人が表現したことを周りが受け止められるように学級担任が言葉かけをするなどの配慮をし、成功体験を積み重ね、少しずつ自信を付けさせていくことによって、学校でも一人でいることができ、行動することができるようになっていきます。
また、このような場合、実は母親も自分の子供と離れる不安を抱えている場合があります。保護者の話を共感的に聴いたり、連絡をこまめに取り合ったりすることが、保護者と本人の両方の安心につながっていくことにもなります。
そして、本人の今の状況や一貫した対応について学校全体で共通理解を図っておくことも大切です。
小学5年生男子児童について、学級担任からの相談。机の中が乱雑で体育着も教室の中に散乱していることが多い。忘れ物も多く、提出物の期限を守ることもできない。授業には集中できず、立ち歩きやおしゃべりが目立ち、何度注意をしても改善されない。そのため、クラスの子供たちからは批判が出始めている。
保護者へ連絡したところ、家の中でも本人が使った物などを片付けられず、散らかし放題の状態であり、叱ると癇癪を起こして物を壊してしまう有様である。また、1学年下の弟と比べても落ち着きがなく、保護者も自分のしつけが悪いのかと悩んでいる様子であった。どのように対応したらよいか。
家でも学校でも、落ち着きがない、片付けられないなどと注意され続けていると、本人もうんざりし、少し自棄を起こしているかもしれません。同じ兄弟でも、弟よりも落ち着きがないということでしたら、もしかすると、しつけの問題などではなく、生来、気が散りやすく、落ち着いて取り組むことが苦手なタイプなのかもしれません。
一方、彼にもきっとよい点があると思います。いろいろなことに興味をもち好奇心旺盛であるとか、人懐っこく積極的であるとか、長所にも目を向け、誉めてあげることで児童は自信を回復し、もっと誉められたいとやる気を出してくると思います。
その上で、保護者と連携して目標を決め、「これだけは最低限守る」という約束を本人として、やらせてみてはいかがでしょうか。最初からできそうもないことを要求をするのではなく、できることから始め、少しでもできたら必ず誉めてあげましょう。また、人や物を傷つけることなどの本当にやってはいけないことは教えてあげなければなりませんが、その時にもタイミングよく落ち着いてゆっくりと注意することが大切です。このような取り組みを繰り返すことで少しずつできることが増えていくと思います。
さらに、校内で情報を共有し、全教職員で一貫した対応をすることで、環境を整えていくことも重要です。
中学2年生女子生徒について、生活指導主任からの相談。以前から校内で盗難が多発しており、偶然に教員が現場を目撃したことから、ある一人の女子生徒が行ったことであることが分かった。生徒本人を呼んで話を聞くと、同級生の鞄から文房具やリップスティック等をとっていたことを認めた。しかし、全く反省する様子が見られなかった。後日、家の近くのコンビニで、日用品や化粧品を万引きしたところを店員に見つかり、補導された。実は、複数のコンビニやスーパーで万引きを繰り返していたことが分かった。このような生徒に、学校としてはどのように指導していくとよいのだろうか。
学校や社会のルールに反し学校内外で盗みを繰り返しているこの生徒は、規範意識あるいは自分で自分をコントロールする力が弱いと考えられます。まず、人の物を盗んではいけない、万引きは犯罪であるというような、社会のルール、善悪の判断を大人が毅然(きぜん)とした態度で伝えることが重要です。
もしも、善悪の理解はできているのに、このような盗みを繰り返す場合には、もしかすると、寂しい心の隙間をお金や物で埋めていたり、保護者や教員に気付いてもらいたくて無意識のうちに盗みを重ねていたりすることも考えられます。学校では、可能な範囲で家庭環境や子供の心理面にも目を向け、本人が盗みという行為で何を求めているのかという視点で関わっていくことも大切です。
また、盗みという表面にだけ反応して頭ごなしに叱りつけることは、かえって逆効果になることもあります。本人の心の寂しさや悩みなどを、盗みという行為で表現するのではなく、保護者や教員に相談する中で言葉にするということを覚えてもらうことが大切でしょう。
なお、非行については、状況によっては少年センターと連携していくことも大切です。